ヴァイオリン覚書♪バッハ「無伴奏Vnのためのソナタとパルティータ」2009年09月26日

10月発売予定だったアリーナ・イブラギモヴァのCD
バッハ「無伴奏Vnのためのソナタとパルティータ全曲」が
予約しておいたらやはり9月発売に早まっていたらしく、
本日届きました。
もちろん輸入盤ですが、やはり今回も
日本の輸入会社が日本語のオビをつけてます。
曲がバッハだからか、アリーナの使用楽器が
1738年のピエトロ・グァルネリ製であることを強調されてました。

とにかくハイペリオンからのCDデビュー以来
近現代モノが続いた中での定番クラッシックなので
ものすごく期待していたCDでした!

早速、どきどきしながらかけると…

ああ…もうずっと浸っていたいくらい
泣けるほど美しい音が…音が…。

・ソナタ第1番ト短調BWV.1001

出だしの単音→重音が、美しすぎ…。
フレーズ終わりの弱音の余韻がふっと収まった次の瞬間に
次のフレーズの音がすーっと響き出す
この絶妙な緊張感がなんとも言えません。
切れ目がほとんどないフレーズでは
相変わらずレガートの音と音の繋ぎめが綺麗で
お手本です…(無理だけど)
フーガで軽い音が続きますが、軽いけれど丁寧な音の余韻が
しっかり残っていて、響きと響きがぶつからず途切れません。
自分が先生から「残響を使え」と指導されていることの意味が
ものすごく実践的に活かされているのを感じます(笑)
この辺、重音をやたらガリガリ弾く演奏もありますが
彼女の演奏は表現以前に、全ての音の質がすこぶる良い上
丁寧なので、重音に関しては一線を画しています。
最後のプレスト、速いパッセージが延々と続いても、
決して軽やかさを損なわず、音の始末が丁寧で、
全くぞんざいに聴こえません。
これほど聴いてて落ち着くプレストはあまりないです。

・パルティータ第1番ロ短調BWV.1002
ぎりぎりまで延ばした音の後の切れ目の余韻、
それが収まってから来るトリルがものすごく軽くて
くすぐったい音なのですが、心までくすぐります(笑)
この感じ、古典の匂いがものすごく漂っていて好きです。

・ソナタ第2番イ短調BWV.1003
出だしは美しいレガート、ここの前半のトリルは
鍵盤楽器のような音色でタラタラタラタラタラタラ〜と
しっかり弾いています。
軽い部分は少ないですが、音の強弱がはっきりしていて
弱音の響きは秀逸です。
弱音ってこんなに響かせることができるのか!
弓の制御に相当の神経と神業が必要でしょう…。

・パルティータ第2番ニ短調BWV.1004
以前かなり何度か聴いたので一番聴き馴染みがあった曲。
何度聴いても素晴らしいです…。
特に中盤の抑えが利いた盛り上がりと、
短いフレーズとフレーズの合間のわずかな間の緊張感。
どきどきします…。
そしてシャコンヌ、これは以前より
重音の使い方がだいぶ軽くなっていました。
以前はものすごく神経質に慎重に響かせていたのですが
今回は軽めな重音にも微妙なバリエーションがあり
全体的に以前よりかなり抑揚があります。
かといってやはり一音一音の丁寧さ、正確さは
変わらないし、とにかく弱音の美しさが群を抜いていて
ほんとに、ほんとに、こんな風に弾けたら
すごく気持ちいいだろうな〜と憧れます…。

・ソナタ第3番ハ長調BWV.1005
重音がどんどんおおいかぶさってくるようで
耳に迫る静かな迫力です。
なんとなくノスタルジックな感じのする響きが多く、
一緒に歌いたくなるくらい(笑)

・パルティータ第3番ホ長調BWV.1006
よく単発で弾かれるルール、とても軽妙でよどみがなく
音のステップが心地良いです。
メヌエットも可愛らしく、音が歓んでいるようにさえ感じます。
 
はぁ〜お腹いっぱい。
これからしばらくずっと聴いてるでしょう(笑)
でも、初めて聴いたNHK-BS2の録画や
当時彼女の公式サイトから無料(! !)でダウンロードできた
同曲2番とは、歴然と違いました。

いえ、基本的な音はもちろん変わっていないのです。

解釈の違いというのか、表現の変化といえばいいのか
正しい形容がよくわかりませんが
以前はレガートぎみに弾いていた速いパッセージが
随分軽く、切って切って演奏されていました。
そのため、チェンバロとかその辺の楽器の音色に近い響きです。
重音も以前のようにしっかりと響かせるというより
余韻で響かせる感じの音に変わっていました。
だから、元々古典の匂いは漂っていたのに、
さらに古典に近づいた雰囲気に仕上がっています。

それから以前はかなり抑えた抑揚だったのが
この録音では、とてもなだらかで豊かな陰影を含んだ
幅の利いた抑揚を以て演奏されていました。

同じ人が弾いていて、基本は変わっていないのに
こんなに変わるものなんだ!という事実にびっくり!

弱い音ってこんなに色々な表情がつけられるんだ…とか
レガートってこういう風に響かせるんだ…とか
演奏する立場から見ても憧れるばかりの音で溢れていました。

ハイペリオンレコード公式サイトでは全曲試聴が出来ますので
是非!↓
http://www.hyperion-records.co.uk/al.asp?al=CDA67691/2

次は何がCD化されるんだろう…。
チャイコンとか聴いてみたい気も…。
今年は結構ハイペースでリリースされたので
来年とか、ホントどきどきです。

コメント

_ ゆき ― 2009年09月30日 02時54分39秒

バッハの無伴奏ですか~♪
重音の響きが美しくて、本当に繊細な音楽ですよね~。
また一人一人本当に個性が出て・・・

弱音での響かせ方、音の余韻の使い方、勉強になりますがまだまだとても弓を使いこなせませんっ。^^;

アリーナ・イブラギモヴァ、一度聴いてみたいです。

_ ありこ ― 2009年09月30日 16時00分58秒

バッハの無伴奏って、仰るとおり、個性が出ますよね。

アリーナはNHK BS-2で見た時、途中で弱音器をつけたり外したりして弾いており、徹底した音へのこだわりを見せていました。
もちろん音を聴くだけでも、ものすごく精度が高いのですが、
ボーイングの美しいこと!お手本にしたいです!

噂によるとベートーベンのコンチェルトを録音するとかしないとか…
昨年ラストナイトを立ち見しそこねた(T-T)BBCプロムス、
期間中のソロでは常連になりそうなので
今後の活躍に期待大!です。

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