ヴァイオリン覚書♪アリーナ・イブラギモヴァ:イザイ無伴奏Vnソナタ全曲演奏会2014年05月03日

昨秋の濃密なベートーヴェンVnソナタ全曲演奏会3日間から半年余、楽しみにしていたアリーナ(・イブラギモヴァ)の演奏会がやってまいりました!!
このつい先日まで、激務が祟って体調を崩し、ドキドキハラハラな状態でしたが……前日なんとか復調し、東京公演での反響をTwitterで確認したらば……今日に備えて早く就寝しようと思ったのに、結局興奮して眠りがたく、5時起床(笑)

あほです……おかげでヴァイオリンちょびっと朝練しちゃったよ(爆)
今日はよく晴れて爽やかな陽気、うちのヨメ(ヴァイオリン)もよく鳴りました♪これは……悪天候だった東京ですらあの評判、否が応にも期待は膨らむではないですか!!

今日は気合を入れて、お気に入りのヴァイオリンハンカチおろしちゃうもんね!!

ところで、前回演奏会は張り切ってチケットを買いに赴いたにもかかわらず、希望の席が取れずちょっと残念な思いをしたのですけれど、今回はなんと、最前列ド真ん中アリーナ真正面!!

この素晴らしいポジションを得られた点に関してはもう……ただただ、アリーナファン様のご厚意に甘えるばかりで何も報いることはできないワタクシですが、そんな素敵アリーナファンさまと東海圏内で一分一秒、一日一年でもアリーナの音楽を真摯に共有できるファンでありたいと願うばかりです。

そのためにも、にわかクラシックファンの領域を未だ出ない私とはいえ、率直に感じた想いをここに記録しておきたいと思います。

というわけで、真正面の席でドキドキワクワク度5割増しくらいの私の前に颯爽と現れた本日のアリーナは、黒一色の胸元にたっぷりドレープがきいたロングドレス♪
アリーナ、ソロ演奏会の時はなんとなく地味な色のドレスが多い気がします。まぁ、そんなことはほかの人にはどうでもいいかもしれないけれど、ミーハーな私にとってはそれすらも思い出の一ページですので……ご了承をば。


今日のスリリングな演奏をたどるため、あえて普段のように結論から先に述べず、順番にたどっていこうかな。


★イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ op.27(全6曲)

 ・第1番 ト短調
Graveは元々ドラマティックかつメランコリーな部分が交錯する曲調ですが、この難曲に立ち向かう決意が冒頭から溢れ出している重厚な音が、まずガツンと来て、ゾクゾクゾクッ!としました。
やはり今日は楽器が一段とよく鳴っている気が……!!重音の響き方、音量&音の厚みを含めたあらゆるボリュームがガッツリあって、でも絶対うるさくはなくて、そこがアリーナの音だ……とやはり安心。
そう束の間の安堵感を覚えたと思いきや、次の瞬間には心に突き刺さるようなツキツキした音(表現が変ですみません…)や、ツンツンした音が、猛烈なジャブアタックを仕掛けてきます(相変わらずこんな物言いしかできない…)

その漣のような高揚感からのFugatoは、すでに愛聴しつづけている彼女のシマノフスキのVnソナタのように夢現の狭間を彷徨うかのような静けさの中で変化を繰り広げていく曲調と相俟って、私自身の、アリーナが紡ぎだすこの音楽への集中力もごく自然に高まってゆきました

のっけから、ひとつしかない私の心臓をきゅーっと掴み、包み込んでのがさない、音の世界の膨大さ。

心はキュウキュウ歓喜の悲鳴を上げているのですが……Allegretto poco scherzosoでは、きゅんきゅん浮き立ってしまうような、柔らかく軽やかな音……特にアリーナの真骨頂である、微弱音の美しさが際立って、ああ…もうまな板の上の恋…じゃなかった鯉(笑)

他の演奏家の演奏を聴いても、これほど心をくすぐる弱音はちょっとないです。

Finale con brioでは、これまた常々私が絶賛している、ピチカートが……もうイチイチ私の心の琴線まではじいてくれます(アホ)
それと休符の静寂が持つ、異様な緊張感!!これ、この後の曲も同様、いつにも増してスリリングに感じました。
自身のヴァイオリンレッスンでも「休符の意味」を教えられ、譜面通りに無音であればよいというわけじゃない、音楽は休符も含めて音楽、というような事を度々指導されますが…お手本をまざまざと見せつけられているような心持ちです。
そういえば今回のパンフ、各楽章の末尾に拍子がわざわざ記載されていたのですけれど、リズム感のない私にとって3/8拍子とか5/4拍子ってハテナ?な世界で…その、あってないような?拍子の中の休符って、ここまですごいと麻薬のような効果があるな…またそれを効果的に見せてくれるな~と今回特に感じ入りました。

とまぁ、いきなりヴァイオリンという楽器の持つ表現方法の豊かさを再認識するとともに、アリーナの持つ表現力の底知れなさを感じて、言葉を失ってしまったのでした。
  

・第2番 イ短調
あの…このまま萌え死んでもいいですか?←いや、ほんとに死んだら次が聴けないから困るけど。

私、この曲をちゃんと聴きこんだことがなかったので、あれ?バッハの…と思って後からちゃんとパンフの説明を読んだら、やっぱりバッハの無伴奏を意識して書かれた曲だったのですね。
冒頭の軽やかな、聴き親しんだアリーナのバッハ…から、件の静寂な休符があって、急暗転した時には真剣に心臓が止まりそうでした。

後からちょっと他の演奏家の演奏を聴き比べてるところなのですけど、生演奏じゃないせいか、今日のアリーナの演奏とは全然違う音楽に聴こえます……。ドラマティックに聴かせる演奏はいくつもあったけれど、こんなに終始、ギリギリ限界の緊張感漂う演奏はなかったです。

もう、ものすごいもの聴いちゃった感が、後から後からじわじわ心を浸蝕してきて、脳内のレコーダーで何度もお気に入りのフレーズをリピする今このとき……。


・第3番 ニ短調 『バラード』
バラードというタイトルから連想するしっとりした…イメージとは程遠く、叩きつけるような重音と、ひたすら上りつめてゆくストイックなフレージングの数々、繰り返し表現が多いので、聴く方もうぁぁぁぁ~、うぁぁぁぁぁぁ~と盛り上がってきます。
それにしても今日のアリーナはほぼ完璧な演奏
バッハ無伴奏演奏会の時は若干の粗さもあったのだけれど、今日は全く危なげがない。危なげがないというか、危うささえも計算というしたたかささえ感じます。
アルペジオとか、微弱音とか、軽く柔らかいフレーズから、厳粛にヴィブラートを抑えたロングトーンに至るまで、ものすごく極端に指板寄りor駒寄りをボウイングして、その微かなフレージングを見事に表現している箇所が多々ありましたけれど、これ実際目の当たりにしていると、ハラハラするぐらいのぎりぎりのところを明らかに狙って弾いているので、もう本当に、絶句です……アメイジング!!
これができるから、この美しく切ない微弱音が奏でられるんだな…と、この類まれなる才能に、嫉妬すら…いやいやおぼえないおぼえない(笑)


・第4番 ホ短調
休憩を挟んでからの、今演奏会の中で唯一、何度も動画で視聴してなじんできたアリーナの演奏によるイザイ。
次はその4番……またどんな深化に立ち会えるのか……前3番までの期待を裏切るどころか飛び越えて凄まじい演奏から膨らむ、とてつもない期待感に、すっかり私の全神経は支配されていたのでしょう。
だって、ご一緒した方に「ちょっと話しかけづらいくらい世界に浸ってた」と言われたくらいでしたから(笑)

いえ、話しかけて下さっても全然問題なかったのですけれど、あの時の私の頭の中は、アリーナのヴァイオリンが創り出す4次元世界に幽体離脱していたので(爆)、ああ……ううん、やっぱり支配じゃないな、共感?共存?共有???

そんな精神状態の中で再開一番のこの曲は、NHKーBSの録画の演奏とはガラリと雰囲気の異なる世界でした。
ごく最近のネット動画も一部視聴していたので、ある程度、想像には難くなかったけれど生で体感したら………

表現の世界に神様が存在するなら、ヴァイオリンという楽器に妖精が宿るなら、それらに愛された人の生み出す音楽というのは、こういうモノなんだと、至極真面目に感じたのでした。

曲の細部について云々尤もらしく語るより、そっちの方が説得力があるっぽいので……。

曲を生み出した作曲家の表現力も確かに、尊敬に値する類まれな才能あっての事には違いないのですが、演奏家の表現力は時として作曲家の表現の枠を超えるものがあると思います。そして多分作曲家はその瞬間に至福を見出すんじゃないかなと。
私がもしイザイで、今日のアリーナの演奏を聴いたら、間違いなく至上の歓びにうち震え、感謝と畏敬の念を湧き立たせるでしょう。

苛烈に挑み踏み込み(実際彼女は一歩、また一歩と踏み込んでいましたが)、息を殺すほど密やかに寄り添い、その殺した呼吸をゆっくりと吐き出すように…ぽつりぽつりと呟くように語りかけるイザイの4番は、ヴァイオリンにしか出来ない表現のありあまる愉しみと、この楽器が人の世に、人の手によって生み出された事への歓びすら感じさせるものでした。

すべての偶然と必然が導きたもうたこの演奏にブラヴォーー!!


・第5番 ト長調
実は今回、最前列だからという余裕(いやらしい)もあって、わりとギリに会場入りしたため、演奏前にパンフの内容をしっかりチェックしていませんでしたし、5番はあまり聞きなじみのない曲でした。

でも、第一楽章の副題「曙光」のイメージが、この副題を知らなくても、アリーナの演奏を聴いて直観できた事に驚き。
高音域の速弾きアルペジオとか、薄明りからキラキラキラキラ差し込んで、乱反射する朝の光みたいで、いっきに心の風景が輝きだしました。

それと、パンフの説明に「イザイの譜面に駒寄りの記載が多いのに対して、中間部で指板寄りの指示がある」とあったのを後で確認して知った私(苦笑)
いや、それにしてもアリーナの●●寄りは他の演奏者の方の動画とかと比べるとかなり極端かつ、かすれかけの音じゃなく響きを保った音になっているのがスゴイですよ!

それで、第二楽章の副題「田舎の踊り」もちょっぴりアイリッシュとか舞曲系の土の温みみたいな音の感触があるな~と思ったら、これ指板寄りを弾いてるせいなのかな。そういう細かな技術を丁寧に弾き分けると、同じ楽器と演奏者なのに、こんなに印象の違う音色になるんだ~という事も含めて、シロウトならではに愉しめました。


・第6番 ホ長調 
案外親しみやすかった5番から、華やかで明るい、奔放な雰囲気の6番へ。 
イザイは別に全曲順番通り演奏することを想定して作曲したわけではないと思いますが、前半からピーンと一本張りつめた空気感の漂う曲と演奏が続いた流れでの後半二曲は、少し肩の力を抜いて深呼吸して、より一層ゆったりと心地よい緊張感の中で、温泉ならぬ音泉(笑)にとっぷり浸れたと思います。
アリーナ自身も、5番あたりから演奏中に時折微笑みがこぼれていましたし♪

名古屋での演奏、愉しんでもらえたなら、うれしいな♪
とは後から思ったことで、「はぁ……終わってしまいました……」とボソリとつぶやく終演後の私。しょぼぼぼーん。

一抹の寂しさは払拭しきれないものの、今日のお客様の雰囲気も良かったなという歓びもじわり……演奏中の雑音もほとんどなかったし、度々ブラヴォーコールは飛び交った(私は感動で震えてて変な声しか出ないから、独り言くらいの小声で言ってる小心者←笑)し、終演後の拍手はなかなか鳴りやまず割れんばかりだったし♪
この素晴らしい時間を共有できた事に、またまた感謝です!

そしてそして今回もサイン&撮影会あり!!
イザイの録音盤がありませんので、おそらく今後も日本公演はないであろう記念すべきアリーナのCDデビュー盤・ハルトマンと、ロースラヴェツの現代曲2枚のCDへサインしてもらいました♪
サインの順番待ち中、今回も素敵なアリーナファンさんとの出逢いあり♪
名古屋でも圧倒的に女性客は少ないので(苦笑)、うれしいなvvv

今回は、奇しくも服のブランドお揃いvvv

今回の演奏会パンフに、次回のバッハ無伴奏全曲演奏会のチラシも…簡易のものが入っていました。てっきり宗次ホールだとおもったら、またまた今回と同じ電気文化会館でした!わーい!わーい!宗次だとサイン会ないっぽいから……今度はバッハのCDにサインしてもらいたいです!!演奏も愉しみすぎ!!

それから最後に、たまたま久々にアリーナの日本でのマネジメント会社のサイト(右リンク)をチェックしたら、キアロスクーロ・カルテットも同じマネジメン会社になったのですね!!
ってことは……いよいよ日本初上陸期待大ではないでしょうか???
わくわく、どきどき。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※投稿には管理者が設定した質問に答える必要があります。

名前:
メールアドレス:
URL:
次の質問に答えてください:
このブログの管理人名を入力下さい♪
但し管理人が不適切と判断したコメントは予告なく削除いたします。

コメント:

トラックバック