・ソナタ第18番 ト長調K.301 Sonata KV 301 in G major
穏やかなヴァイオリンの旋律に乗って……あああ…!相変わらずセドリックさんのピアノ、切り込んでくるなぁ!と最初の曲から思ったのですけど、私がモーツァルト嫌いのトラウマを抱える原因になったのはピアノの難しさ……それを目の前で軽々と、キラキラコロコロとした音色で描き出してくるセドリックさんのピアノに胸打たれてしまいました。
ベートーベンのヴァイオリン・ソナタも、ピアノの比重が同等いやそれ以上な曲ばかりですが、モーツァルトはむしろピアノの方が圧倒的に重いんじゃないかと……。
・ソナタ 第5番 変ロ長調K.10 Sonata KV 10 in B♭major
多分初めて聴く曲。全く予習して来なかったので(苦笑)プログラムの解説だのみな私でしたが、ロンドンで作曲されたまだ若いモーツァルトの作品だそうで、なんか、そこかしら鼻につく(苦笑)雰囲気たっぷりの、ぶりっこな曲?(爆)
なのですけども今日の演奏中、この曲でどこか一つ印象的な部分を挙げるなら、ヴァイオリンのシ♭に絡むピアノパートの妙技。
この動画をご覧いただくと、実際の譜面に添って楽しめるので、是非。 ほどんどヴァイオリンは伴奏に回る事が多く、その間のピアノが簡単そうでいて難しい事をやってますよねぇ!
特にトリル。この時代の曲っぽく、効果的かつ狙いブリッコ(爆)な感じで多用されていますが、セドリックさん、決して弾き流さず、丁寧かつ正確に演奏していらっしゃいました。
ある程度、アリーナの音の凄さに免疫ついてきた分、セドリックさんの凄さを再認識したというか…ほぅぅぅぅ……。
・ソナタ 第33番 変ホ長調K.481 Sonata KV 481 in E♭major
円熟期に書かれた作品らしく、またヴァイオリンソナタらしい芳醇な味わいも感じられる曲。
しかし!やはりピアノが凄いんだよ……っ!めっちゃ難しい!!にも関わらず、ヴァイオリンを殺さず、活かしつつも、仕掛けてくるセドリックさんのピアノが……!この二人の音が折り重なってくる時の、緩急が……たまりません!
ヴィブラートめいっぱいの低音をホールへ響かせるアリーナの温かみのある音色に、メリハリのあるセドリックさんのピアノがシャープな輪郭を描き出していて、まるで美しいラッピングの中に、ほの温かい焼き菓子が入っているかのような印象を受けました。
ヴァイオリンの聴かせどころは三楽章かな。
ヴィオラのようにしっとりしたアリーナの低音と、弱音のダイナミックレンジが存分に活かされる曲調だし、セドリックさんの弾き出す優しいピアノの音色との絡みも、一番好き。
あと、後半プログラムでも神業だったのですが、セドリックさんのぺダリングが~~~、近い席でじっくり見ていたので、凄くて見入ってしまった……。
素人感覚だと、ノンペダルで弾いてもチェンバロっぽい雰囲気出せるような気がするんですけど、細かいペダルの使い分けで、音が死なないように弾いていて、鳴るヴァイオリンとの誤差が広がらず、音の粒が混ざり合わないように…とにかく凄かった……。
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休憩中は心の興奮を沈めるのに使いまして…
あ、全然関係ないけど、今夜の客層がこれまでとあまりにも違ってて(*_*;ビックリ!
前の方の席ってほぼ、いつもお見掛けする?男性客が多くて、その中に私がポツネンって感じだったのですけど、今日は私のお隣も女性だったし、前の席にも女性がいらして、男女比かなり変わってました!
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・ソナタ 第27番 ト長調K.379 Sonata KV 379 in G major
聴いた事ある曲なので、ちょっと落ち着いて?聴けるかも???と思ったけれど大間違い(笑)
冒頭の重音のヴィブラートからして、深みのある音色にうっとり……。
私、アリーナの重音大好き♪無伴奏系だと、シャープに切り込んでくる印象が強いけれど、今日はモーツァルトだし、ヴィブラートもたっぷりだしで、すっきり昆布出汁に、濃厚かつお出汁がミックスされたような旨み(爆)
すみません…表現が食べ物寄りで(笑)
この辺の曲が、ベートーベンに影響を与えたヴァイオリンソナタなのかな?重ね重ね、無知ですみません……ちょっと似てるとこあるかな?と思ったので。
終盤の、アリーナのピッツに、ロマンティックなピアノの旋律が重なるところ、とっても素敵だったな……うっとり。
ピッツにこれだけのニュアンスが込められるアリーナも素晴らしいけれど、ピッツの雰囲気がより活きてくるセドリックさんのピアノも…素敵だ~~溜息しか出ませんでした。もう変な表現で形容するの止めます(苦笑)
・ソナタ 第15番 ヘ長調K.30 Sonata KV 30 in F major
再び少年モーツァルトの作品に戻って…
これもK10を彷彿とさせるヴァイオリンの、ドのロングトーンと、その間クルクルと動くピアノの旋律が、譜面を追いながら聴くとより感じられます。 この譜面を見る限り、ていうかモーツァルトの時代の譜面って、あんまり強弱記号が書いてないので、そこは演奏者にゆだねられる部分が大きいのかもしれませんが、ヴァイオリン奏者にとって基本中の基本である、ロングトーンの鳴らし方と、そこに内包される表現の厚みを改めて感じさせられました。
どこからヴィブラート使うのか、最初っから使うのか、どの振り幅で、また弓は駒寄りなのか指板寄りなのか、それによって表情が変わるロングトーンの妙技に釘づけでしたワタクシ(笑)
なんでもない3小節とかのロングトーンに、これだけ色んなものが詰まってて、心に染みてくるって凄いなぁ……。
・ソナタ ハ長調K.14 Sonata KV 14 in C major
これもロンドン時代の若いモーツァルト作品。フルートで演奏される事が一般的?でも一応Youtubeさんに
譜面付き動画ありました!
ピアノパートと掛け合いになってるフレーズ、お二人が弾くとホントに素敵vvv
ところどころアイコンタクトしながら、謳うように、おしゃべりのように、時折演奏中とは思われないほど自然体で、楽しそうな表情を見せながら弾いている姿も印象的でした。
リンク張った動画の演奏とは全くニュアンスの違うアレグロで、若い頃のサラッと書いたような曲なのに、聴いてて楽しかったです。
・ソナタ 第21番 ホ短調K.304 Sonata KV 304 in E minor
最後はモーツァルト嫌いの私でも知ってる名曲で締めくくり。
プログラム構成も、二人がディスカッションして考えただけあって、練られてますね~。
ちょっとマイナーな旋律が、秋の木枯らしを連想させるような気もします。
冒頭のヴァイオリンの、軽やかだけどどこか悲しい雰囲気が、アリーナの音だと一層秋っぽい感じ。
確かこれもセドリックさんのピアノのぺダリングが独特…だったような……メヌエットの一部だったかなぁ?ずーっとソステヌートペダル?を浅く踏み込んで弾いててオルゴールの音みたいな雰囲気の部分が一部、あったような気がしたんですけど…あああ!時間経ってから冷静に書くと、記憶が曖昧になってる部分もあっていかんですね。
だとしたら、モーツァルトの時代にはない奏法なので、面白いなって断言できたのに。自分の無知が悲しすぐる……っ!
それは別としても、このメヌエットがお二人とも素敵だったんですよぅ~。
この音にずっと浸っていたいな~と思わせるくらい、切なくて、美しくて。
ちょっと肌寒い気もするけれど、その風を感じたいと思わせるような。それで自分の体温を確認したいような?
モーツァルト弾きたいと思わなかったけれど、この曲だけは今日の演奏を聴いて、ちょっと弾いてみたいなと思いました。
弾きこなせるかどうかは別として。自分の体温を確認するために?(笑)
さてさて、すっかり感動しまくって、脳内再生しまくりの状態でしたけれども、アンコールもあったんです!
ちなみに、土曜日は名フィルとの共演のベルクのコンチェルトを聴きましたが、集中力のある素晴らしい演奏でした。ただ、演奏終了後の余韻を無視した拍手が雰囲気を壊した気がしました。前日はアンコールがあったようですが、土曜日は客層が保守的で拍手が大人しかったからでしょうか?