ヴァイオリン覚書♪~アリーナ・イブラギモヴァのタコVn協奏曲1番2日め2011年11月19日

昨晩の興奮さめやらぬ昼下がり…今日はあいにくの大雨。
アリーナに会うんだからちゃんとオシャレして行きたかったのですけど、最寄り駅まで自転車に乗ったらズブヌレになっちゃうし…で裾濡れ泥はねが気にならない濃いグレイのハーフパンツにグレイのロングブーツ。
せめてものオシャレはグレイサテンのメンズシャツに同系色のネクタイをして、アリーナもよく着てるイッセイミヤケのプリーツプリーズの…濃紺のフードつきベストを着、アイスブルーのラムレザーのライダージャケットを羽織りました。
もちろん、自転車運転中は雨カッパ着用で!

また心臓が煽らないよう(苦笑)、夕方の開演まで余裕をもってでかけ、ランチはラシックに今年OPENしたポルドガル料理のレストランで摂りました。
なかなか美味しかったので、詳細は改めて美食倶楽部にてUPしますね。

私は大事な演奏会や観劇の前は、ほとんど呑まない(逆に海外では必ずと言ってよいほど呑む)のですが、今日は珍しいワインがあったのでついつい呑んでしまい…

少し買い物をしたりして疲れたので、早めに会場へ入りました。

今日は2列目の真ん中からややヴァイオリン寄り。アリーナ(が立つ位置)のほぼ真正面です。
2日、違うサイドから見るというのも、面白いですね♪

今日は昨日より冷静に聴けるはず。
舞台では数名の団員さんがウォーミングアップなさっていましたが、皆さんタコを弾いてらっしゃいます。
昨日のアリーナの凄演に何か触発されたのか、もっと彼女の演奏に応えようという意欲なのか…。

というわけで最初の『ホヴァンシチナ』前奏曲
ゴロー・ベルクさんの指揮は今回初めてみましたが、素人にもわかりやすくて、とっても丁寧。色んな楽器の聴かせどころが、指揮をみればよくわかります。
美しい風景画をゆったりと鑑賞するような気分で聞ける曲と演奏でした。

そしてショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番イ短調 作品77でアリーナ登場!今日は昨夜と同じデザインでサテンのドレスに、黒っぽいモチーフのついたネックレスもしています。また違う印象で素敵~vvv

さて演奏の方は…あ…っ!昨日と全然違う…!!

今日のアリーナは冒頭からものすごくオケと指揮にフィーリングを合わせています。昨晩は完全に曲の世界へ入り込んでいましたけれど、今日は音の世界に耳を傾け身を預けながら応えていく感じ。表情には余裕すらあって、チェロさんどうぞ、なんてオケとの会話が見えるような演奏です。

昨日も楽章の合間には演奏中と打って変わった可愛い笑顔を見せていましたけれど、今日は独奏の休符にも楽しそうな笑みを浮かべていました。
えええ~、同じ曲、同じオケでこんなに変わる!?

アリーナの演奏だけで言えば、昨晩の方が完璧な演奏で、今日はオケの音を逐一丁寧に拾っている(であろう)せいか、2、3のささやかなミス(というほどでもない微妙に音がかすったりブレた程度ですけれど)が見られたのですが、なんだろう…空気が全然昨日と違う…。

聴く私自身に昨日より余裕があったせいもあるでしょうけれど、それだけではなく会場全体に響く音がひとつひとつ、要所要所しっかりと耳に入ってきました。アリーナの音が包み込む、全ての音が心地よい…。

この幸せな時が終わってしまうのが残念だけれど、それもまた次の更なる幸福に繋がってゆく期待感さえして、最高潮に達するラストではなんともいえない気持ちになりました。なんか色々な感情がごちゃまぜになって、表現できない…。

ところでアリーナ、いつからか、ソラマメをうにょっと伸ばしたようなちょっと変わった形の小さな顎あてに変えたのはCDのジャケットで知っていた(NHKで放送された時は私も以前使ってたのと同じタイプの左につく丸いやつでした)のですけど、肩当ても使ってないですね!(2005年の演奏会ではちゃんと使っていました)裏板にハンカチか滑り止めの布を置いて、紐かゴムかで留めているだけでした。
確かに昨晩の演奏くらい激しく身を揺さぶって、楽器を高く掲げて弾いてると肩当てハズレちゃいそうですが、音色の問題で替えたのか…謎です。
私も顎が完治したらまた、肩当てなし(自作のネコ型クッション)に再挑戦してみようかな…(爆)

さて本日のアンコールは、バッハの無伴奏ソナタ2番「アンダンテ」。心が穏やかになる、しっとりとした演奏に癒されました。月曜のリサイタルでは聴けない曲だから、嬉しかったです。
それに昨日は気持ちが昂ぶりすぎて終始、凄い…!圧巻…!としか思えなかったけれど、今日は素敵…うっとり、ワタシシアワセ…と最後までしみじみ思いました。

同じ演奏会に二日行くなんて滅多にやったことないけれど、今回は二日行って、ホント偶然にも行けて本当に幸せでした。こんなに幸せで私いいんだろうかと思うくらい、生きてて良かったなと綺麗事の言葉じゃなく素直に思えたし、素晴らしい生きた音楽を味わうことが出来る贅沢な時間を、色んなものが私に与えてくれたんだなと思えました。

だってホント、まさかの名古屋ですよ!?
アリーナが日本で初めて協奏曲を弾くなら、いち早くTVで取り上げていたNHKが、N響で実現させるだろうとばかり思っていましたから、たとえ日本での協奏曲が実現しても遠征覚悟していたのに…祈りがすごい形で届いて、神様がビンボーな私に下さったプレゼントに違いない!と真剣に思いましたもの!

この後のBBC響との共演って、radio3で配信されるのかな…して欲しいな…もう頭の中ずっとタコ(注:ショスタコーヴィチVn協奏曲第1番)がクルクル回ってしょうがないんだけど(爆)

それはそうと、残りのプログラムもちゃんと触れなくちゃ。
コダーイ組曲『ハーリ・ヤーノシュ』 は解説を見ながら聴くと、情景がちゃんと音楽にリンクして楽しい作品。
今回はちゃんとハンガリーの民族楽器・ツィンバロンが使用されましたが、ない場合はピアノかハープで代用するみたいですね。
確かに、竪琴かチェンバロのあいのこみたいな音がします。弦と鍵盤の中間?に似てる音色でした。一見家具のようで装飾も施してあり、がんがん響く楽器じゃないから、近い席でじっくり見たり聴けてよかったです。

バルトークバレエ『中国の不思議な役人(不思議なマンダリン)』 はちょっとイスラムの音楽が混じったような雰囲気で、シルクロードをわたる商人とか、砂漠の遊牧民が出てきそうな曲調でした。でも解説の内容を見ると、結構ダークでオカルトチックなんですね。私は詳しくないので、そのストーリーが浮かぶというよりは、音遊びというか、音の氾濫というか、異質な音のカオスといった感じで、ディズニー映画のすったもんだを見てるような気分になりました。
でもそんな曲調とは裏腹に、今日はこの曲が一番、オケと指揮に爽快感を覚えましたね。

というわけで二日間の夢のような現実が終わってしまいました…。
あと一日、アリーナに会えるのが楽しみだけれど、早くもちょっぴり切ないよ~ぅ。そうそう、海外旅行の出発当日、飛行機が目的地に向けて飛び立って「あ~楽しみだけど旅行始まっちゃった…」見たいな気持ちに似てます…。

おうちへ帰って、頭の中を巡っているタコの出だしとか…耳コピでいい加減なヴァイオリンを弾いてみました(爆)
当然だけど、私の技術と楽器ではG線なんてちっとも鳴らない。でも、あの素晴らしい音が響いてるイメージだけは膨らみました(爆)
息を殺すような忍び足のような弱音の時の、フィンガリングとか、ボーイングとか…一人で真似っこするだけなら誰にも迷惑はかかりませんものね(笑)
なりきりアリーナですよ(笑)

明後日を楽しみに…よい週末を過ごします。